大切なものを見つめるための装置

「大切なものを見つめるための装置」

本作は、来廊した鑑賞者に作品を手渡し、実際に手に取ってもらうことで成立するシリーズである。作品に触れる行為を通じて、鑑賞者自身の「記憶の引き出し」が静かに開かれ、個人的な体験や感情、エピソードが呼び起こされていく。作品を手にした鑑賞者は、意図せずしてその場の「スポットライト」を引き受ける存在となる。周囲の視線が自然と集まり、その状況が、他の鑑賞者とのあいだに会話や関心、交流を生み出していく。ここでは、作品は鑑賞される対象にとどまらず、人と人、記憶と現在をつなぐ媒介として機能する。それぞれの手に渡り、異なる時間と身体を通過することで、「大切なもの」は一つの答えに収束することなく、関係のなかで立ち上がり続ける。